IT融合による新たな産業の創出に向けて(1)


「ITというツールを使い倒したら何ができるのか」
経済産業省商務情報政策局情報処理振興課長 高橋淳氏


IT融合とは一体何だということですが、言ってしまえばITの利活用なんですね。ITを他の産業でどうやって利活用するのか、そのITの利活用をきっちりやっていきましょうということなんですが、私どもの課でやっている情報化月間というものがあるのですね。10月を情報化月間と定めて日本全国情報化を促進しましょうと。で、今どき情報化、というのが役所の中で議論になって。これは1972年に第1回があってちょうど40回になったわけであります。40回たって情報化か、という人もいるのですね。今さら日本に情報化とはっぱかけなくても日本は情報化進んでるよね、と。そうなんですが、ここで今回、お話しするのはハードの技術進歩に支えられたソフトということをこれからお話しするわけですけど、まぁ、ハードの進歩というものはこの40年で目覚ましく日本は進んだ。今や日本のネット環境は世界に誇れるレベルの品質を達成しているのではないかと。で、利用する方、ソフト的なものはどうかということですけど、もともと40年前に情報化と言った時も情報通信の利活用ということは当時も、当時の古い資料をひも解いても同じようなことが書いてあるんです。ただ、その頃、彼らが考えていたITの利活用というのはITを使えば業務が効率化するよね、ということがほとんどでありまして、それまで莫大な人手をかけてやっていたことをITを導入することによって省力化、省人化が進んで、それによって効率化が図られて事業の生産性が上がって日本の産業力が高くなると、それが当時考えていたITの利活用の典型的な姿だったと思います。

今回、私どもがITの利活用ということを言っているのは、そこからおそらくグルッと一巡をしている。つまり既存のビジネスというものがあって、そのビジネスをどうやって効率化をしていこうかというITの利活用ではなくて、いままでの既存ビジネスの枠組みの中でできなかった壁をITを使ってぶっぱらっていこうじゃないかと。もっと言えば他の産業とつけていくときのツールとしてITを使おうじゃないかと。これがあえて40年たって私どもがITの利活用と言っている意味でありまして、「そんなことぐらいできているよ」って思われるかもしれませんが、意外とITというのは身近になっているがゆえに、そこがややおざなりになっているのではないかなぁと。もう1回、ITというツールを使い倒したら何ができるのだろうかということをいろんな産業で考えてみる。そこが、ITが身近になっているがゆえに希薄になっているのではないかという印象を私どもは持っておりまして、いくつかの重点分野でITを使い倒していただく。こんなことができるんだということを考えてみたい、ということがこのIT融合というものの基本的なコンセプトでございます。

で、基本的な手段として私どもは3つを掲げております。1は要素技術の強さのみだけでは勝てない。2つ目が「日本市場発」から「最初からグローバル」に、3つ目がコンピューターからインターネットをTHINGする、ということであります。まず1点目。要素技術の強さだけでは勝てない時代ということでございますが、これは申し上げるまでもないことであると思いますけれども、日本という国はですね、要素技術は世界に冠たるものが今でもあるわけでありまして、これはどこも否定しえないことだろうと思います。ただ、この要素技術がですね、どうもバラバラになっていることが今の日本の一つの弱みというのはおかしいですけれども、強みをいかしきれていない大きな原因になっているのではないかなと思います。私、昨年の夏まで2年間ほど、民間企業に出向しておりました。非常にいい技術をいっぱい持っている会社なんですね。技術の1個1個は日本でも、世界でもトップレベルの技術がいっぱいあるわけですよ。それが商品にどれくらい結びついているかというと、なかなか難しいんですね。

個々の技術者は世界に冠たる技術をもっとよくしていくということにすごく生きがいを見出している。ところが、マーケットが商品として求めているモノは、そこまで最先端の技術ではないことが多いのであります。そういう技術よりも2段階とか3段階手前のモノをどうやって商品化して、それをどうやってここに魅力がありますと言って売るか、それを考えた方がいいってこともあるわけです。もちろん1個1個の技術を磨いていくということは絶えずやっておかないと、技術は磨かないと陳腐化してしまいますから技術を磨く人というのは絶対必要なわけですよね。なんですけど、なんとなくみんなでそれをやっているんじゃないかなという印象がある。みんなで技術を磨いている。するとすごくいい技術がいっぱいできてくるんですけど、それにどういうコンセプトをつけてどうやって売っていくんだろうということを考えるスタッフの絶対数がすごく少ないという気がしたんですね。こういった現象というのは日本の企業に一般的に見られる、要素技術はすごくいいのだけれども、そのシーズ(種)をどうやってニーズと折り合わせていくのか、ここの部分が残念ながら弱い。アップルはそれができている会社だということになるわけでありまして、どうやってある程度、成熟した技術を作っていって、それをどう売っていったらそれはお客さんの心に訴えかけていく製品になるのか、ということをより重きを置いて考えてみる。技術の深掘りだけでは日本の企業は勝っていけないのではないかということであります。基本的なスタンスとしてそういうことであります。(IPAフォーラム2011より)

【高橋淳】たかはしじゅん。昭和63年、東京大学法学部卒業、同年通商産業省に入省。平成18年経済産業政策局経済社会政策室長、平成22年商務情報政策局消費経済政策課長等を経て、平成23年商務情報政策局情報処理振興課長、現在に至る。