IT融合による新たな産業の創出に向けて(2)


「20年後にはガラパゴス携帯という概念自体が吹っ飛んでいる」
経済産業省商務情報政策局情報処理振興課長 高橋淳氏


 2つ目は携帯のガラパゴス化ということがございますけど、なんだかんだいって日本のマーケットというのは今まで大きかったわけですね。そこ(グラフ)の数字は1995年、今から15年ほど前と、2030年、今から20年くらい後ですから今はちょうどその間くらいになるわけですけれども。1995年、日本がバブルが終わってちょっと勢いが衰えたとは言え、このころが最大だったと思うのですけど、まぁ2割経済ということが当時ありました。世界の2割のGDPを日本は占めているんだ、GDPのみならず他の指標も2割程度で収まったのだと思いますが、そういうことで言うと日本で製品を売れば、世界のマーケットの20%ということですから、日本で勝っていくということはものすごく有意性をもっていたのですね。ところが、これは推計でございますけれども、今のままの動きが続けば2030年、20年後には日本のGDPはあまり大きくなっていません。5.3兆ドルが6.2兆ドルになっている。これだってですよ、やや楽観的な数字をはじいているかもしれません。人口減少は現実のものとなっていますから、2030年の人口はもっと減っているわけでありまして、それなのにGDPが20%も増えているのは、この15年間に日本で起きたことが今から20年後にそんなパラダイムシフトでドーンといけるのかというと、この数字ですら楽観的かもしれない。世界の方は少なくともこれくらいにはなるでしょう。そうすると、世界でせいぜい6%のシェアしかない。日本の中でどんなにドミナントにやれたとしても、それは世界のマーケットの20の1をとっているだけである。そうすると残り20分の19で支配的にマーケットをとって、規模の経済でメリットを享受できる企業がその勢いで日本のマーケットに参入してきたら。ガラパゴス携帯というものは揶揄されていましたけれども、あれが成り立っているだけ日本はまだ平和だった、ということかもしれません。今から20年経ったら、ガラパゴス携帯という概念自体が吹っ飛んでいる、そんなものは存在できなくなるくらいのマーケットの規模になっているかもしれない、ということであります。

基本的な手段の3つ目でございますけど、これはどちらかというと技術よりの話しでございます。今でもモノはつながっているわけですけれども、つながっているというのは基本的にはコンピューターどまり、世界中にあるコンピューターが一つの回線でつながっているという状態がなんとなくイメージに一番近いかなと思います。けれど、これからはセンサーとかが今でもものすごい勢いで安くなっていますので、これからどんどんセンサーチップというものの低価格化が進んで、高品質化が進んで、いろんなものにチップを入れて、いろんなものがかってに情報をとって、情報をクラウド上のサーバーにどんどん送ると。クラウド上のサーバーの能力というのは言ってしまえば事実上、無限ですから、そこに無限にデータがたまっていく、ということが起きていく。かつ莫大にたまったデータを処理する、処理系の演算能力というものも飛躍的に上がっていくだろう。最近の流行りの言葉で言えばビッグデータのようなものが宝の山として存在する時代になってくる。ようするに、どうそれを使うかということ、それは使う側にまかされる。とにかくデータだけは手に負えないくらい大量に存在する。そういう時代が遠からず将来やってくる。そういうことになるとそれをもとにどういうことをしようかということになるわけであります。こういったことを前提といたしまして、IT融合による新社会システムの創出に向けてということでございますけれども、ようするにシステム全体、IT系を入れたシステム全体を考えよう、つまりITを利活用して生まれる一つのシステム、これをりっぱなものにしてシステムをパッケージとして日本の強みとしてとらえて日本国内の構造改革とシステム輸出、この両面で展開をしていく。ということを考えたらどうか、ということがIT融合ということの、まぁ、マクロな話しでございます。

分野はいろいろ考えられると思いますが、私どもは今、申し上げた考え方でさらなる構造改革というか、新分野の開拓を進めていく分野として6つの分野を想定しております。一つめがスマートアグリシステムとかっこよく書いてありますが農業です。二つ目はスマートヘルスケア、医療・介護です。三つ目はロボット。四つ目は先行して走っていますがスマートコミュニティ、エネルギーですね。五つ目は自動車単体というよりはITSのようなシステムにつながった形での自動車。6つ目は電子書籍のようなコンテンツ・クリエイトであります。これら重点6分野について簡単にご紹介をするとともに、横断的な課題解決ということについてもご紹介したいと思っております。それらの重点分野についてどのように政策を展開するのかということでございますけれども、やや抽象的な話しになりますので端折らせていただきますと、意欲のある人たちを、農業なら農業分野で、ITを利活用して農業の構造改革だということでですね、意欲のある方たちを集めて、意欲というのは能力といってもいいのですが、そういう方たちを集めてフォーラム、場を作ろうと。そこでいろいろなご議論をいただいて、こういうシステムを作っていこうじゃないかという考えをまとめていただいた上で、そこで出てきたシステムについては、まぁ、システム流通というのは一昨年くらいからでしょうか、経済産業省として大きな政策的な柱として掲げておりますので、システム輸出の柱に乗せるような形で海外展開をうたっていく。で、それとともにですね、リスクマネーの供給というのは、なかなか今の日本では政策ツールが多くないのですけれども産業革新機構ですとか、そういうようなところを使って必要があればお金を出していくし、さらには世界マーケットで勝負するためにはですね標準化というものもやっていくんだということでございますけれども、ちょっと抽象論でピンとこない方も多いと思いますので農業を例にその辺のお話しをさせていただきたいと思います。(IPAフォーラム2011より)

【高橋淳】たかはしじゅん。昭和63年、東京大学法学部卒業、同年通商産業省に入省。平成18年経済産業政策局経済社会政策室長、平成22年商務情報政策局消費経済政策課長等を経て、平成23年商務情報政策局情報処理振興課長、現在に至る。