ロシアの国家的ドーピングは歴史が長い



世界反ドーピング機関の独立委員会は9日、ロシアが国ぐるみのドーピング(禁止薬物使用)を行っていたとする調査報告書を発表した。更に、独立委は、国際陸上競技連盟が、ロシア陸連を資格停止処分にするよう勧告した。
筆者は、以前にもロシアのドーピング問題を取り上げたが、ロシアの国家的ドーピングは、今に始まったことではない。つまり、米ソ冷戦時代には、自らの共産主義体制の優位性を宣伝するため、スポーツ選手を利用してきた歴史がある。
特に陸上競技の場合、個人競技であり、選手の運動能力が、直ぐに記録に結び付くことから、欧米諸国はコーチと選手が合意の上で、ソ連・東欧諸国は国家ぐるみで、ドーピングを行ってきた。特にハンマー投げなどの投擲競技は、ドーピングの効果が最も発揮されるので、これまでもドーピングに手を出す選手が多かった。現在、世界歴代30傑を見ると、1970年代、80年代に樹立されたソ連・東欧諸国の選手が多く並んでいる。
陸上競技を観戦して、最も感動する瞬間は、世界新記録が樹立された時である。筆者のように陸上競技の観戦を趣味にしている人間にとって、世界新記録樹立の瞬間は、一生記憶される出来事である。その世界記録が、いつまでたっても破れないのが、投擲競技なのだ。
それでは、現在の投擲競技の世界記録を紹介するが、順番は種目、氏名、記録、期日である。
・男子砲丸投…バーンズ(米国)…23.12…1990.5.20(その後ドーピングにより出場停止)
・男子円盤投…シュルト(東独)…74.08…1986.6.6
・男子ハンマー投…セディフ(ソ連)…86.74…1986.8.30
・男子やり投…ゼレズニー(チェコ)…98.48…1996.5.25
・女子砲丸投…リソフスカヤ(ソ連)…22.63…1987.6.7
・女子円盤投…ラインシュ(東独)…76.80…1988.7.9
――女子ハンマー投は最近始まり、女子やり投は1999年4.1日以降に新規格になったので除外する――
注目して欲しいのは、世界記録が樹立された期日である。つまり、トレーニング方法が、どんどん近代化して、フィジカル(体格や身体能力)が向上しているのに関わらず、一向に最近の選手が世界記録を更新出来ない。筆者から言わせれば、現在の世界記録は、ドーピングによって樹立されたものである、ということだ。
最後は、室伏広治選手のハンマー投げの記録について説明したい。現在の世界記録は86.74で、続いて、
・2位…ティホン(ベラルーシ)…86.73…2005.7.3(その後ドーピングにより出場停止)
・3位…リトヴィノフ(ソ連)…86.04…1986.7.3
・4位…デウ゛ャトフスキー(ベラルーシ)…84.90…2005.7.21(その後ドーピングにより出場停止)
・5位…室伏広治…84.86…2003.6.29
注目して欲しいことは、室伏選手以外の選手は、ドーピング疑惑の選手であるということだ。要するに、室伏選手の記録は、事実上“世界記録ではないのか”ということである。ロシアや旧東欧諸国の“愚挙”によって、いかに陸上競技やスポーツ界が侵されてきたのか。それを考えると、怒りしか沸き起こってこない。まさにロシアは、今でも冷戦思考が残り、近代国家に脱皮出来ない欧州国家なのだ。