緊迫するウクライナ情勢



 ウクライナ情勢が緊迫している。現在進行中のロシア軍による現状変更は、今後、大きな歴史的な変動を起こす気がする。まずは、クリミア半島(人口約200万人、うちタタール人約24万人)の歴史を眺めてみる。
 元々は15世紀に成立したクリミア・ハン国の子孫・タタール人が居住。その後、オスマン帝国保護国となり、1783年に帝政ロシアに編入。そして、1954年にソ連のフルシチョフ党第1書記がロシア共和国からウクライナ共和国に移管した。
 なぜ故にフルシチョフは、クリミア半島を移管したのか。朝日新聞は「ウクライナの経済振興のため」、週刊文春は「ウクライナで活動したフルシチョフが、ウクライナ人のニーナ夫人の誕生日プレゼントとして移管した」(ロシア新聞)、元NHK職員・池上彰氏は「ウクライナのご機嫌を取るため」と説明。ロシアの学者は「ウクライナ編入によって、『ロシアとウクライナの合同』と呼ばれた出来事(1654年、ウクライナはロシア・ツァーリ国の保護下に入って、ポーランド・リトアニアに対抗しようとした)の300年祭を祝うため」と説明している。
 ウクライナは、古くから「ヨーロッパの穀倉」地帯として知られているにも関わらず、1933年前後と1946年前後に大飢饉に襲われた。特に1933年の餓死者は600万人と言われ、2006年にはウクライナ議会が「ウクライナ人に対するソ連の計画的ジェノサイド」であると認定、米英など西側諸国においても同様の見解を示した。
 フルシチョフは、1928年にウクライナのキエフ党組織局長を3年間、38年から約10年間はウクライナ党第一書記を務めるなど、ウクライナと関係が深い人物である。そのため、誰よりもウクライナの実情を把握しており、当然あの忌まわしい大飢饉の惨状も知っている。だからこそ、フルシチョフは“罪滅ぼし”の意味から「自分の一存」(NHK記者の言)で、クリミア半島をウクライナに編入したと思う。
 さて、今回の力による現状変更は、今後の世界情勢に大きなインパクトを与える。なぜか。それは、このまま世界が現状変更を認めると“悪い例”となり、世界各地で力による現状変更に向かう可能性があるからだ。
 特にドイツ。その他、ポーランド、スロバキア、ルーマニア、フィンランドなどは、第二次大戦で領土をソ連に割譲された。その意味では、これらの国々の内部からは、これから色々な動きが起きてくると予想する。
 そもそも第二次大戦中の1941年8月14日、ルーズベルト大統領とチャーチル首相は、「大西洋憲章」で「領土の不拡大」を宣言、翌42年1月1日にはソ連を始め世界26ヵ国が「大西洋憲章」と同じ内容の「連合国共同宣言」に署名している。ところがソ連だけは、宣言を無視して戦後に領土を拡大した。そのソ連の後継国家・ロシア、またもや戦後の国際協調の基本的秩序を破壊した。
 ロシアは、確かにクリミア半島を獲得した。しかし、これまでの戦後秩序を破棄した事で、世界的に孤立する状況に陥った。要するに、戦術的には成功したが、戦略的には大失敗したと思う。
 日本とロシアの間には、北方領土問題がある。これまでは、日本だけの孤立奮闘という面があった。しかし、これからは、ウクライナ及び西側諸国もロシアのえげつなさを知り、日本を支援してくれる可能性が出てきた。安倍首相は、自分の内閣で解決する事を望んでいるが、焦る事はない。日本は戦後70年待つたが、これから50年待てば千島列島及び南樺太が返還される可能性が出てきたのだ。世界情勢は、劇的に変化する。安倍首相よ、焦るな!