素晴らしい新国立競技場の建設を願う



 昨年6月、高校生の桐生選手が“日本人初の100㍍10秒突破なるか”と注目された際、私は“国立競技場は向かい風が多いので無理であろう”との文章を書いた。その後、2020年の東京オリンピック開催が決定し、新たな国立競技場の建設(解体費67億円を含め1462億円)も決定された。そのような時、良いタイミングで題名「国立競技場の100年」が出版された。著者は、著名なサッカージャーナリスト・後藤建生氏で、国立競技場の通史を何十年も待つたが“誰も出版しないので自分が書いた”と説明。
 著書によると、明治神宮の付属施設である外苑に陸上競技場が造られたのは、1924年(大正13年)。その後、1958年のアジア大会開催のために、旧明治神宮外苑競技場を取り壊し、現在の国立競技場を1年強の突貫工事で完成させた。
 その際、東側と西側のどちらをメインスタンドにするかで議論があった。多少長くなるが、その重要な部分を掲載する。
 「競技場の配置については、従来の明治神宮外苑競技場と同じようにメインスタンドを西側の渋谷川沿いに設置するか、それとも東側の絵画館側に設置するかという点について、両論があったという。『メインスタンドを東側に設置すると、屋根を付けても西日を防げず、また、東側は地盤そのものが高いのでメイン側の建物の高さを自由にできない』というのが『西側論者』の主張であり、一方、『東側論者』は『外苑全体の構成から考えれば、絵画館側が表玄関となるべきだし、渋谷川沿い(当時は民家が立ち並んでいた)は風格に欠ける』という主張だった。
 この議論が決着したのは、明治神宮側からの『絵画館側のスタンドはできるだけ低くしてほしい』という要望だった。
 これは、明治神宮外苑が完成して以来の明治神宮側の一貫した姿勢だった。」
 やはり、風向を考慮しないで、メインスタンドを「西側」に建設したのだ。つまり、4〜10月の陸上競技のシーズンは、南風が多いので、これを考慮すれば、必然的に「東側」にメインスタンドを建設しなければならない。ところが、西側に建設したため、メインスタンド前の走路が向かい風になり、好記録が出ない競技場になった。そのため短距離選手からは、不評な競技場になった。
 この著書は“名著”だと思う。しかしながら、残念な事が二つあった。一つは、風向のことが全く触れられいない事。二つは、陸上競技場として維持・管理していくことを批判している事だ。著書の中で「もし8万人のスタジアムを維持するというのであれば、やはりフットボール専用スタジアムに改装すべきだろう」とか、「『8万人収容の巨大な汎用スタジアム』。それは、時代遅れの選択と言うべきだろう」と書いている。
 確かに、オリンピック開催後の維持・管理費は、大事な要件である。だからと言って、何故にフットボール専用に改装しなければならないのか。スポーツのメイン種目は、陸上競技である。そこを考えると、著者からは“陸上競技に対する理解や愛”が全く感じられない。
 その意味では、新国立競技場が屋根付きで建設さることは朗報である。現在の国立競技場で、陸上競技やフットボールの試合を雨や寒風の中で観戦したり、テレビで観戦した私としては、大変喜ばしい限りである。屋根さえあれば、色々な催しが計画通り実施出来るので、予想以上の利用率が期待できる。
 やっぱり、国立競技場の著書は、陸上競技専門のジャーナリストに書いてもらいたかった。サッカー専門家の限界を示した“名著”とも言える。いずれにしても、素晴らしい新国立競技場の建設を願うものである。