改めて、新国立競技場は“風向” 問題を無視して建設して良いのか



 昨年の5月頃、新国立競技場の建設案に対して、“風向”問題を数回にわたって説明した。新国立競技場が、東京五輪に向けて建て替える以上、世界に誇れる競技場であって欲しいと考え、問題点を指摘した。特に“風向風速”は、陸上競技にとって“命”ともいうべき重要事項であるからだ。
 こうした中で、もう1つの問題点を指摘する文章に出くわした。それは、4月14日発売の雑誌「月刊陸上競技5月号」の編集後記で、下記のように書かれている。
「いよいよ国立競技場の改修作業が本格化してきた。すでに解体作業は進み、かつての姿を拝むことはできなくなっている。ただ、改修後の新国立競技場には補助競技場を作らない予定で、2020年東京五輪は仮設のトラックで対応する意向だという。日本最高峰の競技場を作ろうとして、なぜサブトラックがないのか。以前から国立に補助競技場がないことはたびたび問題とされてきた。数千億円の予算をかけた新国立競技場を単なるハコモノとしないためにも、状況が改善されることを望みたい。(山本)」
 しかしながら、上記の件については、以前から陸上競技関係者が指摘したことで、別段見当たらし問題ではない。それでも、陸上競技の専門誌が、新国立競技場の問題点を指摘したことは、我が輩に勇気を与えた。
 さっそく、発行所の「株式会社陸上競技社」に電話をして、山本氏(三十代)と話しをした。
私「一読者ですが、今月発売の陸上競技を読みました。サブトラックの問題を指摘していましたが、それよりも重要なことは競技場の“風向”だと思う。今のままの位置・方向で建設すると、また短距離種目は向かい風になってしまう」
山本「陸上競技のシーズン中は、常に(向かい風)2㍍の風が吹いている」
私「あなたも理解しているようだが、新国立競技場の位置・方向は、どうなっているのか」
山本「もう設計図は公表されており、以前と同じ位置・方向です」
私「それでは、また向かい風になってしまう」
山本「日本陸上競技連盟も、国立競技場を管理する『日本スポーツ振興センター』に“要請した”と聴いています」
私「これでは、天候が晴天白日でも、開閉式屋根を閉じて陸上競技大会を開催しなければならない。そうなれば、風速は無風だし、芝生は傷むし、電気代もかかる」
山本「そう言うことになりますね」
私「日本の陸上競技場は、どこも大きな道路から貴賓席に入りやすい所を正面にしている。選手の立場など、全く考えずに建設している」
山本「えー、本当ですか」
私「本当です。全国の競技場を見ればわかります。やはり、選手が喜んで走りたい競技場にするべきだし、観客も楽しめる競技場にしなければダメだ。だいたい、陸上競技を理解していない人たちが、競技場建設をリードしているから、このような“欠陥競技場”を建設してしまう。あなたも、あなたなりに、立派な新国立競技場が完成出来るように発信して下さい」

以上のような対話をしたが、やはり新国立競技場は以前と同じ位置・方向で建設されるようだ。
 要するに、陸上競技関係者のほとんどが、新国立競技場は“風向”に問題があると認識しているにも関わらず、何故に新国立競技場の“設計変更”が出来ないのか、ということである。これでは、総工費約1600億円を投入したにも関わらず、早い段階で“欠陥競技場”ということを国民が知ることになる。何やら、我が国の公共事業の縮図を見ている感じを受けるのだ。