今も続く暗殺テロ国家・ロシア



 久しぶりに、ロシアに関する本を読んだ。書名は「毒殺ー暗殺国家ロシアの真実」(著者=アルカディ・ワクスベルク<1922〜2011>)で、著者はユダヤ系ロシア人のジャーナリストである。本書は、2007年にフランス語で出版(書名「毒物研究室」)され、その後、英語、ポルトガル語、イタリア語、ルーマニア語、ブルガリア語、スウェーデン語、ラトヴィア語、チェコ語で出版、あるいは出版の準備が進められている。当然のことであるが、ロシアでは発禁本になっている。
 本の主旨は、訳者が“あとがき”で書いている。
「本書が強調しているのは、今日のテロリズムの生みの親が、ボリシェヴィキ革命以降、『目的に奉仕することはなんであれ、道義的に正しい』というレーニン、スターリンの思想を広めたことである。レーニン、スターリンがテロの理屈を構築した点で、現代社会に与える影響は甚大なものがある。彼らは権力基盤を確立するために、間断なくテロを行った。レーニンが設立した『毒物研究室』は、科学を総動員して自然死に見せかけることが可能な毒物を開発して、それを国家主導のテロに用いた。毒物テロは、スターリンによって大々的な発展と実績を上げた。それはいまも、プーチンのロシアに継承されている」
 スターリンによる暗殺については、余りにもトロツキー暗殺が有名であるが、そのほかにもレーニンや、その妻・クループスカヤなどの死にも疑問を投げかけている。更に、旧ソ連崩壊後では、プーチン大統領の元上司でサンクトペテルブルグ市長だったアナトーリ・サプチャク、ジャーナリスト=ユーリー・シェコチーヒン、ブルガリアの独裁者の娘リュドミラ・ジフコフなどの不自然な死を、毒殺であると指摘している。特に、サプチャクの不自然な死に対しては、具体的に「ベッドサイド・テーブルの読書灯に噴霧された物質によって毒殺された」と指摘している。このほか、故アンナ・ポリトコフスカヤに対する毒殺未遂の状況や、現在でも数十名に及ぶ体制批判派のロシア人ジャーナリストが殺され、本格的な捜査もなされずに闇に葬られている現状にも触れている。
 ところで今月13日深夜のNHKBSは、今年が欧州大戦70周年ということで、フランスの放送局が製作した「独裁者スターリンの功罪」というドキュメンタリー番組を放送した。その中で、スターリンを「とんでもない犯罪者」と紹介し、スターリン体制下で、
・100万人の処刑
・1800万人の強制移住
・700万人の餓死者
などと具体的に犯罪行為を紹介していた。このスターリンの犯罪行為は、日本も無関係ではない。何故なら、スターリン体制下で、共産主義思想に被れた日本人100人くらいが滞在し、そのうちの半数が処刑されているからである。
 何を云いたいのか。要するに1970年代ころまで、日本の左翼勢力の一部は、近代国家から一番縁遠い西洋国家・旧ソ連を“人類理想の国家”と崇め、恥ずかしくもなく支持を叫んでいた。そして、先の大戦では、旧ソ連は連合国の一員として戦勝国になり、戦後は超大国として君臨し、今年9月には、火事場泥棒で占領した北方領土で、大規模な祝賀行事を計画しているという。つまり、大戦当時の日本指導者が、終戦時期を誤ったために、あのような“反人権国家”である旧ソ連によって多数の同胞を失い、そして戦後は北東アジアの地政学リスクを抱え込んでしまった。そのことが、今でも悔しくて、悔しくて、いつも我が輩の心は晴れないのだ。