中国富裕層が支えるカジノで経済は再生されるか/浜田和幸


 カジノ解禁が現実味を帯び始めている。安倍晋三首相を最高顧問とする超党派の国際観光産業振興議員連盟が中心になって策定されたカジノ実現のための統合型リゾート推進法案が、今秋の臨時国会で成立する見通しだという。なぜ、今、カジノなのか?カジノをめぐる世界的な現状と国内動向を参院議員の浜田和幸氏に読み解いてもらった。

浜田和幸参院議員習近平の綱紀粛正策が影落とす?

カジノを支えてきたのは中国の富裕層です。それは一番近場のマカオに行ってみればすぐにわかる。マカオができるまでは、それこそモナコだとか、ラスベガスに中国の富裕層が大勢きていた。そういう人たちは急速な経済成長を遂げた中国の成功者。自分の力で稼いだ人もいるけれど、国のお金を自由にできる、そういう立場の人たちがこぞってカジノの虜になってしまったわけです。僕もいろんな国でカジノを回ったけれど、中国人が圧倒的な存在です。ここ10年くらい。でも、ご承知のように習近平が綱紀粛正、公金を使った贅沢な遊びは徹底的に今、取り締まろうとしているわけだから、今までのようにマカオにしても、マレーシア、ベトナムなどのギャンブルのメッカといわれる場所にですね、中国人富裕層がいつまでくるのか、保証はないのです。

シンガポールなどは、ファミリーで楽しめるエンターテインメント+ギャンブルという形で今のところ成功している。マカオは2015、16年くらいまでに今の3倍の投資をして施設を増やそうとしている。成功しているカジノはお客をがっちりつかんでいる。一方でアトランティックシティなどは倒産が相次いで、軒並み経営不信に陥ってしまって税収の先行きが危ぶまれている。明暗が分かれ始めているわけです。そんな中で果たして日本が成功できるビジネスモデルを提示できるのかというと、日本で行われている議論というのはそういうところまで踏み込んでいないのです。

五輪を契機に外国人観光客を倍に

シンガポールやマカオの事例を見て、カジノはとても外国人をひきつける魅力的なビジネスだと。税収のアップにもつながるし、というようないいところしか見ていないから、既存のカジノで上手くいかなくなっているところがどんどん増えているのに、それをどうやって乗り越えていけるのかという日本独自のカジノの在り方というところにまで議論はいっていない。だから下手をすると、アメリカで失敗したカジノの運営会社、こういうところが今、日本のゲームメーカーだとか、不動産業界だとか、エンターテインメント業界といっしょになって日本に売り込みを盛んにしているわけですね。カジノ議連の人たちは、そういうところのいい話しをいろいろ聞かされて、秋の臨時国会で法案を通しましょうという動きになっているわけです。

2020年の東京オリンピックを契機に外国人の観光客を倍にしましょうと。外国人にたくさん日本にきてもらって、お金を使ってもらって、日本経済を活性化させましょうと。なおかつカジノであれば、大儲けをする人もいるけれど、その分、課税ができる、そういう意味で税収アップにもつながるから、ということでいいところだけを過大に評価して、シンガポールなどのファミリーが楽しめるようなカジノをぜひ日本にも導入しましょうと。カジノという言葉を前面に出すと印象が悪いからインテグレーテッド・リゾート(Integrated Resort)、統合リゾート施設という形にして楽しい施設と文化的な雰囲気とファミリーで楽しめる施設にカジノも入れましょうと。そういうことなんだけれども、日本は30年間議論をしてきて、いっこうに実現しなかった。それを東京オリンピックというゴールが見えているから、それに合わせて外国人誘致の切り札として、東京、大阪、あるいは沖縄、仙台、そういう特定の地域の地域経済の振興にも関連付けましょうという形で、経済特区のような形で、健全なカジノ経済を進めようとしていますね。

世界の後追いでは成功しない

しかし、本当にカジノというものが日本経済再生の切り札になるものなのかどうか。そのあたりを考えると、競争というか、ライバルというか、日本がカジノに踏み込めなかった間に、ラスベガスだとか、モナコだとか、そういうところを皮切りにして今はマカオもそうだし、マレーシアにもたくさんできている。世界中にカジノが林立していて、その中で成功しているところと失敗しているところの差がどんどん明らかになってきている。だから、日本でやるということについてのちゃんとした知恵というか、他にないようなアイディアを準備できるのかということを考えないと、多額の投資をしても、どんどんカジノが倒産しているアメリカのアトランティックシティの二の舞になりかねない。単純に世界の後追いをしていたのでは、もはやタイミングは逸していると言わざるをえないのです。

浜田和幸(はまだ・かずゆき)】参議院議員。国際政治経済学者。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所を経て、2010年に自民党公認で参院選初当選。2011年6月、自民党に離党届を提出し菅直人政権で総務大臣政務官に就任。その後、国民新党入りし外務大臣政務官、国民新党幹事長を歴任。2013年の解党を経て現在、無所属。著書に『恐るべきTPPの正体』(角川MKTG)など。